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90年代 少年ガンガンの異常な熱量

90年代 少年ガンガンの異常な熱量


今でこそ漫画雑誌を買う事は無くなりましたが、小学生~中学生の頃にかけては、月刊少年ガンガンを毎号買って読んでいました。

ある日、弟がスーファミのゲーム「トルネコの大冒険」の紹介記事が掲載されたガンガンを買ってきてくれて、そこからガンガンを読むようになりました。
トルネコの大冒険は1993年の9月発売なので、その少し前に発売した号からだと思います。

初めて読むガンガンは、「ハーメルンのバイオリン弾き」「南国少年パプワくん」「魔法陣グルグル」「輝竜戦鬼ナーガス」など、熱く面白い漫画が多数連載しており「こんなに面白いマンガ雑誌があったのか!」と、衝撃を受けたのを憶えています。

最近のガンガン

90年代のガンガンの話の前に、最近のガンガンについて少し触れておきたいと思います。

ガンガンの最新号についてサイトで確認すると「おじさまと猫」という、一人暮らしの渋いイケオジが猫と暮らす作品が、表紙を飾っていました。

90年代 少年ガンガンの異常な熱量

少年誌の表紙を飾るにはかなり攻めた内容だと思いましたが、ゲーム化も決定しているという事なので、作品としては順調なようです。


「鋼の錬金術師」を読んだ時も「すごく面白いけど、これは俺の知ってるガンガンじゃないな…」と、実に懐古厨めいたモノローグを脳内でつぶやいたものですが、最近のガンガンは、また違う力学が働いているようです。


現在のガンガンに連載中の作品のタイトルをチェックすると、

「乙女ゲー転送、俺がヒロインで救世主!?」
「社畜さんは幼女幽霊に癒されたい」
「元魔王軍幹部、娘つき 第二の人生は現代で」
「人類滅亡直前なのにニート勇者が働かない」
「組長の娘は異世界で最強の組を作るため極道無双はじめました」


など、タイトルだけで大体のコンセプトが分かるようになっている作品が多いのが印象的でした。
また、異世界・転生ものなど、ジャンル漫画が多いのも最近の風潮を反映しているようで、連載ラインナップから色々と見えてくるものがありますね。

90年代のガンガン

とにかく泥臭く、暑苦しく、濃い漫画が多かった90年代のガンガン。
絵柄も非常に個性的かつ魅力的でした。

その作品の一部をご紹介します。
※ネタバレしています。ご注意ください。

ハーメルンのバイオリン弾き(渡辺道明)

90年代 少年ガンガンの異常な熱量

旅のバイオリン弾き・ハーメルと少女フルートの冒険物語。

クラシックの名曲を弾く事で、それぞれの曲に応じた戦闘効果を得る事ができるという着想が面白く、特に作品初期はそれぞれの曲の成り立ちや、作曲家が込めた想いについても語られ、曲の凄みがバトルの凄みに転化され、非常に盛り上がるバトル描写がされていました。

ストーリーのハードさとパンチのあるギャグの二面性がある漫画で、第一話のハーメルの登場シーンは衝撃的でした。

ハーメルの登場シーンは、こんな感じでした。↓
ハーメルの美しいバイオリンの音色に、平和の象徴であるハトたちが集まってくる。
「美しい音色と優しい人柄にハトたちが集まって来たんだわ…」と、村娘のフルートが見とれている。

優しい笑顔を見せたかと思うと、一転してバイオリンでハトを撲殺し、焼き鳥にするハーメル。

腹を抱えて笑いました。
これはとんでもない漫画だと思いましたね。

巨大ピアノをかついで戦う愛の戦士ライエルも、すごい発想のキャラで最高でした。



輝竜戦鬼ナーガス(増田晴彦)

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モンスター・怪物の非常に精緻な描写で知られる漫画家、増田晴彦の作品です。

主人公の高校生・霧山竜輝は魔神と竜王の血を受け継いでおり(凄すぎる設定!)、より濃く血を引き継いだ竜族の姿に変身する事ができます。
↑上の単行本1巻の表紙に描かれているのが主人公です。

クラスメイトが怪物に襲われた事をきっかけに、魔神との戦いに巻き込まれていく…という物語です。

怪物のウロコとかトゲとか、とにかく執拗な描写が印象に残っている作品です。

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Z MAN -ゼットマン-(西川英明)

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かつて人工生命体「イーデア」と、それを管理するコンピューター「MOTHER」が存在し、人類とイーデアは共存していた。
しかし「MOTHER」が暴走し、イーデアは人間の殺戮を開始。
人類は対イーデア独立停止ユニット「Zイレイザー」を起動し、MOTHERとZイレイザーは激突し、地球の半分が砕けた。(大変だ!)

1000年後、記憶を失った少年ナナシは少女ヤティマに出会うが、実はナナシは1000年間眠り続けていたZイレイザーで…。
という、ハードSF作品です。

画面の書き込みの量や熱量、表情の凄み、キャラクターの熱くほとばしるセリフ回しなど、熱く濃い漫画が多い90年代ガンガンの作品の中でも、屈指の熱量を誇る作品です。

作者の西川英明は、その後ヤングアニマルに拠点を移し「職業・殺し屋。」シリーズや、将棋マンガ「3月のライオン」のスピンオフ「3月のライオン昭和異聞 灼熱の時代」などを手掛けています。

ゼットマンは絶版になった漫画が無料で読めるウェブサイト「漫画図書館Z」で、全巻を読む事ができます。



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南国少年パプワくん(柴田亜美)

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アニメ化もされた、ガンガン初のヒット作です。

初期は南の島に住む少年パプワくんと、漂流した青年シンタロー、喋るカタツムリのイトウくんや、二足歩行するタイのタンノくんなど奇妙な住人たちがドタバタを繰り広げるギャグ漫画でしたが、後期は何故かバトル漫画にシフトしていました。


作者の柴田亜美の破天荒なキャラクターも一部で知られており「アウト×デラックス」出演時は泥酔してマンションの廊下に寝たり、漫画編集者に対して「あいつら全員の弔辞を読んでやる」と発言するなど、アウトな様子を地上波で公開していました。

魔法陣グルグル(衛藤ヒロユキ)

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1992年~2003年に渡り連載され、ガンガンの顔となっていた作品、魔法陣グルグル。
パプワくんに続いてアニメ化された作品でした。

作者の衛藤ヒロユキは、ガンガンに掲載されていた「ドラクエ4コマ劇場」出身の作家で、ドラクエのキャラクターが真面目な顔で「ふんどし!」と叫んで大根を剣の様に掲げるというギャグで一世を風靡しました。

衛藤ヒロユキと言えば「ふんどし!」
という印象は未だにあります。

そんなシュールな作風だった衛藤ヒロユキの魔法陣グルグルは、「ふんどし!」に通じるシュールさをうまくファンタジーの世界観に融合させており、ギップルという妖精がふんどしを締めているところなどに、ドラクエ4コマの面影が窺えました。

連載を重ねるにつれて絵柄が可愛くなっていきましたが、時折見せるシュール要素に「ふんどし!」から漫画家としてのキャリアをスタートさせた衛藤ヒロユキのイズムを感じたものです。



電撃ドクターモアイくん(岩村俊哉)

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ホモで小学生で、さらに医学の天才であるモアイくんが、好みの同級生の男の子のお尻にあいさつ代わりに顔をこすりつけるという衝撃的な第一話から始まるギャグ漫画です。

今ではコンプライアンス的に掲載が難しい内容ですね。

かなりエッジの効いたギャグと流血沙汰も度々起こる刺激の強い展開が特徴でした。
通っていた小学校のクラスの男子の間で、よくこの漫画のネタで盛り上がっていましたね。

電撃ドクターモアイくんは、漫画図書館Zで無料で読む事ができます。



ドブゲロさま(ジョージ秋山)

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2020年に亡くなった漫画家、ジョージ秋山も90年代ガンガンで連載を持っていました。

ジョージ秋山は「銭ゲバ」など、人の心の闇を容赦ない筆致で描く漫画家で、描く作品のほとんどが問題作とされているようなイメージがあります。

物語は、サイババの先祖だという聖者ドブゲロサマが乗り移った少年・下郎が「魂の救世主」として活動を始める…という内容です。

当時のガンガンの中でもあまりにも異質な絵柄と内容で、なんだか空恐ろしかったのを憶えています。

全一巻で完結しており、今ではkindleで読む事ができるんですが、やっぱり怖いような、それでも読んでみたいような、僕にとってはガンガンを毎号読んでいた当時と同じく、目にすると心がザワつく作品ではあります。

下のページで、冒頭の試し読みができるようになっています。

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この記事を書いた人
せみやま せみやま
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