いただいたメッセージへのご返信はこちら

静岡 龍華寺の巨大ソテツ(静岡ソテツ紀行・前編)

2020年11月16日

静岡 龍華寺の巨大ソテツ(静岡ソテツ紀行・前編)

2020年の10月に、静岡で巨大なソテツを見てきました。


ソテツは以前、実家にも植えていた植物で、元々思い入れがある植物でした。
実家のソテツはもう無いんですが、ソテツを懐かしむ気持ちから、観葉植物の「ソテツキリン」を育てたりしていました。


ソテツキリン
ソテツキリン


ソテツキリンで十分満足していたつもりでしたが、今年の夏に、我が家のソテツ事情にちょっとした変化が起こりました。
妻のバク子が観葉植物や園芸に凝り始め、家の中の植物が、じわじわ増殖してきていたのでした。

僕の意識も自然と植物に引き寄せられて「植物育てるならソテツかなぁ・・・」とポロっと言ったところ、話が転がり、今年の8月に幹の直径14cmほどの真・ソテツ(ソテツキリンではない)を購入する事になりました。


ソテツ

やっぱりリアルソテツはいい!


静岡ソテツ紀行プロローグ・ソテツ本を読む

ソテツが家に来てからと言うもの、圧倒的な存在感を放つソテツという植物への関心が自分の中で高まり「もっとソテツの事を知りたい!」という気持ちを押さえられなくなっていました。

そこで、まずは図書館でソテツについて書かれた本を借りて読んでみる事にしました。

ソテツをみなおす―奄美・沖縄の蘇鉄文化誌

静岡 龍華寺の巨大ソテツ(静岡ソテツ紀行・前編)
created by Rinker
¥2,200 (2024/11/07 03:25:15時点 Amazon調べ-詳細)


かつて沖縄・奄美では、ソテツの実や幹に含まれるデンプン質が、貴重な食糧源になっていました。

ソテツには毒性物質のサイカシンが含まれているため、調理法を間違えると命にかかわる危険なものでしたが、食料に乏しかった島の暮らしを支える大切な存在だったのだそうです。

今ではそんな時代の記憶も薄れ、観葉植物としての価値以外には省みられる事も無くなったソテツ。
この本は、かつて島の人々の生活を支え、親しまれていたソテツの文化史に光を当てています。


僕も観葉植物としてのソテツしか知らなかったので、かつて沖縄・奄美でこんなにソテツが食べられていたとは、全く知りませんでした。

「ソテツのデンプンはのどごしが良く、美味しかった」という記述もあり、毒抜きに失敗すれば命にかかわるソテツですが、食欲をそそられてしまいました。
この本を読んでから、南国の空の下でソテツのお粥を食べる・・・そんな夢想にひたる瞬間が、自分の中で何度かありました。

蘇鉄のすべて

静岡 龍華寺の巨大ソテツ(静岡ソテツ紀行・前編)
created by Rinker
¥1,980 (2024/11/07 03:25:15時点 Amazon調べ-詳細)

「ソテツをみなおす」と内容が被るところもありますが、こちらはソテツのエピソード集という側面があり、ソテツにまつわる雑多なデータや小話を多数収録しています。

また、泉芳朗という奄美出身の詩人の書いた「暮情」という詩が掲載されており、非常に印象的でした。
奄美の方のアイデンティティーとしてのソテツが、魂を震わせる迫力をもって描写されています。

一部引用します。

蘇鉄を見ろ!ソテツを
それを喰べて俺達は俺達は
勇敢に吼えるのだ 息吹くのだ
てくてくと歩め!

泉芳朗「暮情」


Googleブックスで「暮情」を含む本の一部を読む事が出来ます。




この本には日本各地に存在する巨大なソテツについての詳細なデータも掲載されており、中でも静岡県には「日本三大ソテツ」の内の2本があるという、衝撃的な内容も含まれていました。

日本三大ソテツの内の2本が静岡に!?
(残り1本は大阪)

これは行くしかない!!

いても立ってもいられず、静岡ソテツ紀行の計画を立て始めたのでした。

出発~魚市場食堂で腹ごしらえ

10月の晴れた日の朝、静岡県の「龍華寺」と「能満寺」にある巨大ソテツを見る日帰りの旅に出発しました。

最初の目的地は静岡市清水区にある日蓮宗のお寺、龍華寺です。





清水魚市場 河岸の市


その前に、まずは腹ごしらえを。

お昼は、龍華寺の手前にある「清水魚市場 河岸の市」でとる事にしました。

ここは清水港の新鮮な魚介を購入出来る市場や、飲食店の集まった総合施設で、飲食店もかなりの数がありました。
その中でも今回は「魚市場食堂」というお店に入ってみました。

魚市場食堂
エンタメ性重視な感じですね。

魚市場食堂
メニュー。

魚市場食堂
海鮮丼にしてみました。

1人だったし、ソテツも待っているので、サクっと食べてお会計。

「清水魚市場 河岸の市」では他の飲食店もあるので、この辺りに来る時の楽しみが出来ました!





龍華寺に到着!(静岡ソテツ紀行)

午後1時手前ごろ、龍華寺に到着しました。

静岡 龍華寺の巨大ソテツ(静岡ソテツ紀行・前編)
龍華寺の駐車場。
平日だったので、ガラガラでした。


静岡 龍華寺の巨大ソテツ(静岡ソテツ紀行・前編)
入口の拝観案内図。
ソテツだけではなく、サボテンもあるとの事。


静岡 龍華寺の巨大ソテツ(静岡ソテツ紀行・前編)

静岡 龍華寺の巨大ソテツ(静岡ソテツ紀行・前編)
さっそく来ました、ソテツです。

まだ境内に入ってもないのに!
出し惜しみは無しだ! という心意気を感じますね。

このソテツたちも、自宅のソテツと比べると遥かに巨大なソテツなんですが、これらはお目当ての巨大ソテツではありません。

入口で拝観料300円を収めようとしたところ「ただいま留守にしております。拝観料300円は本堂の賽銭箱にお納めください」との事。なるほど!

ソテツだけではなく、巨大な植物が満載。

龍華寺 ココスヤシ

境内は、ソテツはもちろん、ソテツ以外の巨大な植物が満載のすごい空間でした。
上の写真の巨木は、ヤシの仲間ですね。

ナツメヤシ

龍華寺 ナツメヤシ
ナツメヤシの巨木もありました。

龍華寺 ナツメヤシ
根っこの風貌が独特です。

龍華寺 ナツメヤシ
幹が太い!

あらゆる場所にソテツが!

静岡 龍華寺の巨大ソテツ(静岡ソテツ紀行・前編)

境内の各所に、惜しげもなくソテツが植えられていました。
数えていませんが、何十本もありましたね。

龍華寺のソテツ 雌花

たわわに実をつけたソテツ。
ソテツは個体によって雌雄が分かれており、実がつくのは雌花です。

奄美では、現在でもソテツの実を使った「そてつみそ」が生産されており、お土産品として購入する事が出来るそうです。

龍華寺のソテツの実
ソテツの実。


龍華寺のソテツ 雄花
中心部からニョキッと生えているのは雄花です。
このソテツは、雄株という事ですね。


若がえる石

若がえる石
若がえる石。
触ると若がえる効能がありますよ、という事なんでしょうか?

山梨県内で道祖神として祀られている「丸石神」にとてもよく似ていますが、ルーツは一緒なんでしょうか。
静岡と山梨は地理的にも近いので、可能性は十分にありそうですね。

参考リンク:丸石神|巨石順礼

顔、顔、顔

静岡 龍華寺の巨大ソテツ(静岡ソテツ紀行・前編)

特に何の説明も無く、これらの彫刻が置かれていました。

何十個も・・・

誰がどう言う思いで彫ったものかは分からないんですが、正直ちょっと怖かったです。

静岡 龍華寺の巨大ソテツ(静岡ソテツ紀行・前編)

静岡 龍華寺の巨大ソテツ(静岡ソテツ紀行・前編)

静岡 龍華寺の巨大ソテツ(静岡ソテツ紀行・前編)



「ベルセルク」のベヘリットにも似てますね。

ベヘリット
引用:三浦建太郎「ベルセルク」


ソテツ坂

静岡 龍華寺の巨大ソテツ(静岡ソテツ紀行・前編)
起伏のある境内の、坂の上に見えるのは・・・やはりソテツ。

静岡 龍華寺の巨大ソテツ(静岡ソテツ紀行・前編)

オレはようやくのぼりはじめたばかりだからな、このはてしなく遠いソテツ坂をよ・・・
そんな感じの坂です。



男坂
引用:車田正美「男坂」



本堂でお賽銭を入れようとしたら・・・

巨大ソテツに対面する前に、まず本堂で拝観料300円をお納めしようと思ったんですが、ここでちょっとした問題が発生しました。

お賽銭箱に入れるための300円が、小銭で無い・・・!

1000円札ならあるけど・・・
ケチくさい事を言わずに、入れるべきか・・・?

すでにこの境内に足を踏み入れてから、見ごたえのある植物を多数見る事が出来ていると言うのに、
たかが1000円・・・いや! 差額の700円が惜しいというのか!?(心の声)


そんな葛藤があり、観念して1000円入れようかと思った時・・・
ちょうど係の方が近くまで歩いて来たのを見つけ、・・・

「あの、すみません、拝観料300円お支払いしたいんですが、1000円札しか無くて・・・」

両替してもらってお賽銭箱に300円入れるつもりでしたが、
普通に1000円お渡しして、お釣り700円を受け取りました。

龍華寺 本堂

静岡 龍華寺の巨大ソテツ(静岡ソテツ紀行・前編)

静岡 龍華寺の巨大ソテツ(静岡ソテツ紀行・前編)

本堂の中も、自由に見学する事ができました。

静岡 龍華寺の巨大ソテツ(静岡ソテツ紀行・前編)

絢爛豪華ですね。

静岡 龍華寺の巨大ソテツ(静岡ソテツ紀行・前編)

大きな屏風絵が飾ってありました。


静岡 龍華寺の巨大ソテツ(静岡ソテツ紀行・前編)

静岡 龍華寺の巨大ソテツ(静岡ソテツ紀行・前編)

なんだか、すごく良いタッチで描かれていますよね。
一目で好きになってしまいました。


静岡 龍華寺の巨大ソテツ(静岡ソテツ紀行・前編)
ビビッドな木魚もありました。


龍華寺の大ソテツ・樹齢800年の雌株

龍華寺のソテツの中でも、とりわけ大きい2本の木があります。

一つは、天然記念物でもあり、日本三大ソテツの1本にも選ばれた、推定樹齢1100年の雄株。

もう一つは、樹齢約800年の雌株です。

静岡 龍華寺の巨大ソテツ(静岡ソテツ紀行・前編)

樹齢800年の雌株。

天然記念物の雄株の方は横に広がっているので、縦の大きさを感じられるのは、こちらの雌株の方だったりします。

静岡 龍華寺の巨大ソテツ(静岡ソテツ紀行・前編)

妖怪ヤマタノオロチのような、四方にうねる枝が圧倒的です。

偶然でしょうが、「龍華寺」というお寺の名前とイメージがぴったりですね。

静岡 龍華寺の巨大ソテツ(静岡ソテツ紀行・前編)

剪定の痕。


龍華寺の大ソテツ(雄株)天然記念物・日本三大ソテツの1本!

静岡 龍華寺の巨大ソテツ(静岡ソテツ紀行・前編)

これが龍華寺の大蘇鉄。
樹齢約1100年の巨大ソテツ(雄株)です。

樹齢800年の雌株は、猛々しくも均整のとれた姿をしていましたが、こちらの雄株は「地を這いずる化物」という様な、おどろおどろしさを感じました。


静岡 龍華寺の巨大ソテツ(静岡ソテツ紀行・前編)

このソテツは、開山当時に中国から寄進されたものという事で、開山が1670年ですから、その時点で樹齢750年くらいの巨木だったと言う事ですね。

中国からどうやって運んだんでしょうか?
その移植の時の影響で、地を這うような樹形になったのかな・・・。
色々と想像が膨らみますね。


静岡 龍華寺の巨大ソテツ(静岡ソテツ紀行・前編)

静岡 龍華寺の巨大ソテツ(静岡ソテツ紀行・前編)

静岡 龍華寺の巨大ソテツ(静岡ソテツ紀行・前編)

静岡 龍華寺の巨大ソテツ(静岡ソテツ紀行・前編)

静岡 龍華寺の巨大ソテツ(静岡ソテツ紀行・前編)

静岡 龍華寺の巨大ソテツ(静岡ソテツ紀行・前編)


静岡 龍華寺の巨大ソテツ(静岡ソテツ紀行・前編)

自重による破損を防ぐため、支えるための柱が何本も立っていました。


静岡 龍華寺の巨大ソテツ(静岡ソテツ紀行・前編)

雄株と雌株のツーショット。


龍華寺 境内の風景

ソテツでお腹いっぱいになったので、少し境内を歩く事にしました。

※ソテツが食べられるという話を上の方でしたので、紛らわしい表現になりましたが、食べてはいません・・・。
精神がソテツでお腹いっぱいになりました。


静岡 龍華寺の巨大ソテツ(静岡ソテツ紀行・前編)

青藻が絵になる池がありました。


静岡 龍華寺の巨大ソテツ(静岡ソテツ紀行・前編)

高台から、静岡市の風景が一望できます。


静岡 龍華寺の巨大ソテツ(静岡ソテツ紀行・前編)

あっ、ここにも・・・。


静岡 龍華寺の巨大ソテツ(静岡ソテツ紀行・前編)

ここにも・・・。


静岡 龍華寺の巨大ソテツ(静岡ソテツ紀行・前編)

高台から、富士山を見る事が出来ました!


静岡 龍華寺の巨大ソテツ(静岡ソテツ紀行・前編)

静岡 龍華寺の巨大ソテツ(静岡ソテツ紀行・前編)


龍華寺 高山樗牛の「樗牛館」

高山樗牛は明治期の文豪で、龍華寺の風光を気に入り、遺言によりここにお墓を立てました。
境内には樗牛の銅像もあります。

樗牛館は、樗牛直筆の手紙や原稿、美術品のコレクションが収められています。

樗牛館


三彩鎮墓獣
三彩鎮墓獣

静岡 龍華寺の巨大ソテツ(静岡ソテツ紀行・前編)

静岡 龍華寺の巨大ソテツ(静岡ソテツ紀行・前編)

日蓮聖人立像
日蓮聖人立像

三彩美人俑
三彩美人俑

三彩駱駝俑
三彩駱駝俑

青磁・猪
青磁・猪

布袋

なんとも良い笑顔の布袋さま。


大黒天

こちらは大黒さまでしょうか。


龍華寺の大サボテン

龍華寺 サボテン

ソテツが凄すぎて目立ちませんが、龍華寺には樹齢300年という、結構なサボテンもあります。


静岡 龍華寺の巨大ソテツ(静岡ソテツ紀行・前編)

江戸時代初期には日本でサボテンの栽培が流行し、多数の種類を輸入したが寒さに弱く多くは枯渇。
温暖の地・静岡に寒さに強いウチワサボテンが残ったのだそうです。


静岡 龍華寺の巨大ソテツ(静岡ソテツ紀行・前編)


看板に「サボテンは木ではなく多年草ですが、長い年月を経て根本は既に木質化しています」と、何気にすごい事がさらっと書いてありました。


静岡ソテツ紀行、後半の「能満寺」編に続きます。


この記事を書いた人
せみやま せみやま
生き物が大好きなWebエンジニアです。
身近な自然を楽しみながら暮らしています。

生き物とサブカルのポッドキャスト「セミラジオ」を配信中です!

詳細なプロフィール

日記,植物

Posted by せみやま