12/12 いただいたメッセージへのご返信はこちら

バードリサーチ鳥類学大会2020 Onlineのyoutubeライブを視聴しました

2020年12月20日

「バードリサーチ鳥類学大会2020 Online」というイベントの、youtubeライブがとても面白かったので、備忘録の意味も込めて紹介したいと思います。

バードリサーチとは?

「人と自然の共存」のため、鳥類の調査・情報収集などを行っているNPO法人です。

バードリサーチ鳥類学大会2020 Onlineとは

野鳥について色んな角度で調査を進めている研究者の方々が、youtubeライブやスライドショーで、自身の研究成果を発表するのを視聴する事が出来ます。

youtubeライブのコメント機能で質問したり、zoomを利用したディスカッション、聴講者同士の交流など、様々なプログラムが用意されています。



ハイガシラゴウシュウマルハシのヘルパーはどうやって繁殖地位を得るのか 三上かつらさん(バードリサーチ)

ハイガシラゴウシュウマルハシという、耳慣れない鳥についての研究発表。
オーストラリアに生息する、ヒヨドリより少し大きな、まあまあ大きな鳥です。

鳥類の90%くらいは一夫一妻制だそうですが、わずかな例外の中にヘルパーという、繁殖に参加せず、他のペアの子育てを手伝う個体がいる鳥がおり、このハイガシラゴウシュウマルハシ(英語名でバブラー)も、ヘルパー制度を採用している鳥なのだそうです。

三上さんの研究テーマは、このバブラーのヘルパーが、繁殖地位を獲得するパターンはどんなものがあり、それぞれどの程度の割合なのかを調べるというもの。

研究の結果、オスは生まれた群れの中でヘルパーを続けながら「出世」して、繁殖に参加するパターンが多く、メスは生まれた群れを離れて、繁殖個体になる事が多かったそうです。

2つの群れからそれぞれ旅だったオスとメスが新たななわばりで群れを作るケースは、かなり少なかったそうです。

新たな群れが出来にくい理由としては、同じ地域に生息する「アオツラミツスイ」という鳥が、バブラーの巣を乗っ取ったり、攪乱する事がとても多く、2羽だけの新しい群れを作っても、防衛力が足りずに繁殖がうまくいかないのではないか・・・という見解を、三上さんが述べられていました。

新規の群れよりも既存の群れの方が繁殖が上手くいきやすく、メンバーを入れ替えながら維持されていくという事なので、何十年、何百年、もっと長くに渡って存続している、由緒ある群れもあるのかも知れないですね。
そう考えると、とても面白い生態の鳥ですね。

昼行性になった都市河川のカモたち~シティ・ダックの働き方改革~ 金井裕さん(日本野鳥の会)

トークテーマのサブタイトルが、とても面白いですね。

元々、夜行性の傾向が強いカモ類ですが、発表者の金井さんは、都市を流れる掘割の河川では昼に採食行動をとるカモが多い事に着目。

夜間の行動を、暗視カメラで調査したところ、夜行性の筈のカモたちが「ほぼ寝てる」という驚きの結果が。

理由としては、掘割の河川という、人や天敵の影響を受けづらい環境に適応したため、わざわざ餌を探しづらい夜間に採食をする必要が無くなったのではないか?との事でした。

地元の川沿いを歩くと、昼間に元気に泳いでいるカモが普通に見られるので、そもそもカモが夜行性という認識が無かったんですが、元々は夜行性なんですね。


日本にいる日本にいない鳥:籠抜けによる非在来種鳥類の野外への移出 西田澄子(バイオ科学技術翻訳)

外来生物の問題がニュースで取り上げられる事も増えましたが、実際にどれくらいの外来種の鳥が、一年間に篭抜けして、野生化しているのか?という点に着目した研究です。

調査の手法がユニークで、脱走したペットについての情報を提供しているWebサイトの書き込みを総チェックし、年間にどの種の鳥がどれだけ逃げ出したかを数値化したのだそうです。

この方法だと、もちろんサイトに報告が無いケースを追う事は出来ませんが、大まかな傾向をつかむ事は出来ます。

それによると、飼い主の元に戻って来る籠抜け鳥は全体の10%ほどで、脱出するのは窓を閉め切っている事の多い冬よりも、春夏の温かい時期が多かったそうです。

また、外来種の鳥が野生化するケースのひとつとして、ペット業者が廃業の際に持て余して野に放ってしまう事があるのだそうです。


ひとまずヤンバルクイナを対象とした声紋による自動識別 森下功啓さん(熊本高専)

熊本高専の森下功啓さんは、大量のヤンバルクイナの声を教師データとしてAIに学習させる事で、ある音声が「ヤンバルクイナの声か否か」を判定するシステムの作成を目指しました。

音声を音声としてAIに読み込ませるのではなく、音声データを変換して作った声紋の画像データを利用したそうです。
AIは画像の認識がとにかく得意なので、音声やその他のデータを何らかの画像にして識別させるという事は、AIの分野では一般的に行われているようです。

最終的に、かなりの精度でヤンバルクイナの鳴き声を識別できるシステムが出来上がったそうで、これからの研究への利用が期待されます。


ロボット聴覚技術に基づく鳥類音声の録音・分析手法の開発 炭谷晋司さん(名大)

大学生の若手研究者による共同研究で、名大の炭谷さんという方が発表されていました。

炭谷さんたちは、マイクロホンアレイという、録音した音の位置を識別できるマイクとソフトウェアを組み合わせて、調査地で「どの鳥が、どの場所で、いつ鳴いたか」という、人間の耳や通常のマイクでは追いきれない分析を可能にするシステムを目指したそうです。

これによって「オオルリは他の鳥が鳴いていても構わず鳴くが、キビタキは他の鳥があまり鳴いていない時に鳴く」など、今まで見えづらかった鳥たちの相互作用について研究を進める事ができます。

この新しいシステムによって、これからどんどん、思わぬ発見がされていくかもしれません。とても楽しみですね!!


バードリサーチ鳥類学大会2020 Online youtubeライブ まとめ

バードリサーチ鳥類学大会2020 Onlineは、12月19日、20日の2日に渡って開催されます。

僕が視聴したのはプログラムのごく一部でしたが、どの研究もとても興味深く、鳥の世界の面白さ、深さの一端を味わう事が出来ました。

これからも身近な鳥に目を向けて、気になるところがあれば、自分なりに掘り下げてみたいと思います。
この記事を書いた人
せみやま せみやま
生き物が大好きなWebエンジニアです。
身近な自然を楽しみながら暮らしています。

生き物とサブカルのポッドキャスト「セミラジオ」を配信中です!

詳細なプロフィール

野鳥

Posted by せみやま