ドラえもん「完全しゅうせいき」絵柄の話
皆さんは、ドラえもんのひみつ道具「完全しゅうせいき」をご存じでしょうか。
ドラえもんのカラー作品集第4巻に収録されているエピソードです。
ドラえもん「完全しゅうせいき」のあらすじ
宿題のスケッチがどうしてもうまく描けないのび太。
そんなのび太にドラえもんは「完全しゅうせいき」というひみつ道具を出してくれます。
ドラえもんによると「なんでもきちんときれいに直してくれる機械」なのだとか。
元の絵がどれだけデッサンが狂っていようと、ワンボタンで修正してくれる機械のようです。
気を良くしたのび太は、しずかちゃんの家に行き、適当に書き殴った絵を「完全しゅうせいき」に入れて絶賛されるという、闇落ちしたAI絵師のような事に手を染めるようになりました。
こちらはジャイアンに「おれをかいてみせろ。」と強要されて、生成した絵です。
味わい深いひとコマ
そういうお話なのですが、このエピソード、自分の中で少し引っかかる所があります。ドラえもんが「すばらしい…」と悦に浸っていたこの絵ですが…
「機械によって美化された絵」としては、これで正しいのでしょうか?
どうも、それ以上の味わいが付与されている気がしてならないのです。
また、この「すばらしい…」のフキダシですが、スペース的には一行で収まる所を、あえて2行で
「すばら
しい…」
としている所も、ドラえもんが心からウットリして、噛みしめるように「すばらしい…」と口にしているような効果が出ており、より一層、このひとコマの味わいを強烈にしています。
ちなみに、アニメ(大山のぶ代版)ドラえもんの「完全しゅうせいき」で生成されたドラえもんの絵はこちら。
こちらはアニメ(水田わさび版)です。
ちょっと、狙いに行きすぎている感はあります。
シンプルに「機械によってかっこよく美化されたドラえもん」というイメージに合っているのは、大山のぶ代版の絵ではないかと思います。
そうしてみた時に、やはり漫画版の「完全しゅうせいき」が生成したこの絵…
「いい加減に描いた絵でも、きちんと修正してくれる機械」が生成した絵としては、やはり味わい深い何かが付け足されすぎているように思います。
だからこそ、各種アニメ版では「完全しゅうせいき」が生成したしずかちゃんやジャイアンの絵が、漫画版とほぼ同じ絵柄で使われている一方、この漫画版の絵がそのまま使われる事はなかったのではないでしょうか。
ただ、それゆえに、この「奇跡のひとコマ」は、ドラえもんにおけるマスターピースとして、圧倒的な存在感を持ち続けているように思います。