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絶滅していなかった動物

2022年2月9日

とうの昔に絶滅したとされ、イラストや白黒写真でしか見る事が出来なかった動物が、実はひっそりと生存しており、突然、生き生きとした姿を見せてくれる。

そんな奇跡の再発見、物語が、少なからず存在する。

バーバリライオン

絶滅していなかった動物

かつてはアフリカ北部(エジプトからモロッコにかけて)生息。ローマ帝国のコロシアムで剣闘士と戦わされるなど、古くから人間の影響を受けていた。

近代以降、狩猟と動物園用の捕獲で更に数を減らし、1922年、モロッコで最後の野生個体が射殺され、絶滅したとされていた。

しかし1996年、モザンビークの放棄されたサーカスから、バーバリライオンの特徴を持った3頭のライオンが発見される。

絶滅していなかった動物
モザンビークで発見されたライオン

さらに、モロッコの現国王の祖父・ムハンマド5世の私的動物園に、純血種の特徴を持つライオンが生き残っていた事が判明。
これらのライオンはかつて、国内の部族から王への忠誠の証として献上されたライオンの子孫たちだった。

ただ、この個体群はサハラ以南に生息するライオンと交配した事があり、完全に純粋なバーバリーライオンかは議論がある。

純血のバーバリーライオンの良質なDNAサンプルが少ない事もあり、どの程度純血のバーバリーライオンに近いのかは、はっきりしていない。

この個体群は「ロイヤルライオンズ」と呼ばれ、現在モロッコのラバト動物園では、全世界で飼育されているバーバリーライオンの血統を受け継ぐ個体の半数、32頭が飼育されている。

ロードハウナナフシ

絶滅していなかった動物

オーストラリア本土から600km離れた孤島、ロードハウ島に生息していたが、1918年にイギリスの補給船Makambo号が近海で座礁。

座礁により船に乗っていたクマネズミが島に侵入してしまい、ロードハウナナフシと5種の鳥類、ナナフシ以外の12種の昆虫を絶滅に追い込んだ。
クマネズミ退治のために導入されたフクロウも、固有種の絶滅に拍車をかけた。

1960年代、ロードハウ島近くの絶壁の孤島「ボールズ・ピラミッド」を訪れたロッククライミングの一団が、ロードハウ島のナナフシによく似た、巨大な昆虫の死骸を発見した。

絶滅していなかった動物
ボールズ・ピラミッド

あまりに険しい地形に遮られ、長らく調査が行われる事はなかったが、2001年、オーストラリアの科学者David PriddelとNicholas Carlileが、アシスタントと共にボールズ・ピラミッドに上陸。
当初、コオロギしか発見する事が出来なかったが、島に自生するMelaleuca属の木の下で、巨大な昆虫の糞を発見。

夜行性のナナフシの行動に合わせ、夜間に調査したところ、Melaleucaの木の下にいる、生きた24匹のナナフシを発見した。

絶滅していなかった動物

ボールズ・ピラミッドで発見されたナナフシと、ロードハウナナフシの残された標本には、外見的に異なる部分があり、同一種ではない可能性もあった。
ロードハウ島への再導入にあたり、同一種であるかどうかが重要であるため、詳細なDNA分析が行われた。
その結果、両者の遺伝的差異は1%以下で、遺伝的に同一の種であるとされ、再導入計画への弾みになった。

過去にロードハウ島と陸続きになった事が無いボールズ・ピラミッドにロードハウナナフシがいかに辿り着いたかは不明で、流木に乗って流れ着いた、海鳥に運ばれたなどの説がある。

飼育下での繁殖が成功しており、2012年4月の時点で、メルボルン大学だけで9,000匹以上のロードハウナナフシが飼育されている。

ロードハウ島への再導入のため、そもそもの絶滅を引き起こしたクマネズミを殺鼠剤を使って駆除する計画が立案されたが、殺鼠剤がもたらす住民や野生動物への悪影響、観光地としてのイメージの低下を懸念する島民も大勢おり、すんなりとは決まらなかった。

国を二分する国民投票の結果、52%の島民が「賛成」に票を投じ、2017年に計画の実行が決定した。

2019年現在、殺鼠剤の散布作戦が実行中だが、島の固有種の鳥類2種、ロードハウクイナとcurrawongへの悪影響が予想されたため、ロードハウクイナ200羽と125羽のcurrawong(野生生息数の半数)が捕獲され、殺鼠剤の毒が消えるまでの間、飼育下で保護されている。 各国の映画賞を受賞した、ロードハウナナフシの再発見物語のアニメーション作品「Sticky」

ロードハウナナフシの孵化。小さな卵から長い手足を持ったナナフシが身をよじりながら出てくる様は、一部始終見ても、どうなっているのかよく分からない。ただただ圧巻。

クニマス

絶滅していなかった動物

秋田県の田沢湖にのみ生息していたが、田沢湖の水を利用した水力発電所が建設された事から、状況が一変。

流出する水量を補うため、付近を流れる玉川の水が導入されたが、玉川の水質は強度の酸性だった。
流入直後、クニマスを含む田沢湖の魚は死滅した。

2010年、京都大学の中坊 徹次が、タレントのさかなクンにクニマスのイラスト制作を依頼。
近縁種のヒメマスをイラストの参考にするため、さかなクンが全国からヒメマスを取り寄せたところ、西湖から送られてきた個体に、黒っぽく、クニマスに近い外見のものがいたため、中坊に調査を依頼。
解剖や遺伝子解析の結果、クニマスである事が判明した。

絶滅前の1930年代に、琵琶湖や富山県、山梨県の西湖や本栖湖に発眼卵が移植されており、この時に西湖に移植された卵が孵化・繁殖を繰り返し、生き延びていたのだった。
移植された湖の内、現在までにクニマスの生存が確認されているのは西湖のみ。

ニホンアシカ(未確定)

絶滅していなかった動物

2016年、下甑島近辺で目撃されたニホンアシカらしき動物。写真も撮影された。

ニホンカワウソ(未確定)

絶滅していなかった動物

2012年に絶滅宣言がされたニホンカワウソも、高知在住の画家が2009年によく似た動物を目撃し、スケッチを残している。

四国では他にも数多くの目撃情報があり、有志の方による捜索プロジェクトも継続中だ。



「失われた動物たち 20世紀絶滅動物の記録」の、絶滅していなかった動物たち

1996年に出版された「失われた動物たち 20世紀絶滅動物の記録」は、NHK衛星第一で放送されていた「20世紀生きもの黙示録」をベースに書かれた本で、たまに本棚から取り出しては「こんな面白い、珍しい生き物がいたのだな」と、感慨にひたっている。

全91種の動物たちの滅びの物語が収録されているが、この内9種は現在、生息が確認されている。

・バーバリライオン(このページで解説)
・ロードハウナナフシ(このページで解説)

アスエロチュウベイクモザル

アスエロチュウベイクモザル
画像引用:Patrick Gijsbers

出典:wikipedia内ページ(英語版)

バーチェルサバンナシマウマ

2004年、ナミビア北部のエトーシャ塩湖周辺にて再発見された。
出典:wikipedia内ページ

ポリネシアマイマイ

出典:生物的防除が落とした影(3)タヒチでカタツムリが大量絶滅?

パレスチナイロワケガエル

2011年、イスラエルのパークレンジャー、ヨラム・マルカ氏により再発見。
出典:生きた化石、パレスチナイロワケガエル

アメリカハシジロキツツキ

2005年に再発見されたが、撮影された映像は不鮮明で、生存の確実な証拠は無い。
出典:Possible Ivory-Billed Woodpecker Footage Breathes Life Into Extinction Debate

やはり絶滅していた?アメリカハシジロキツツキ

確かな目撃などの裏付けがとれないため、再発見されたかに思われたアメリカハシジロキツツキですが、2021年9月29日、再度絶滅していると認定され、絶滅危惧種法の保護対象リストから外される事になってしまいました。

ネグロスケナシフルーツコウモリ

2001年にセブ島、2003年にはネグロス島で再発見。
出典:wikipedia内ページ

ギルバートネズミカンガルー

1994年にオーストラリア南西部のツーピープルズベイ自然保護区で再発見。
保護により数を増やしていたが、2015年のツーピープルズベイ自然保護区内の山火事で数を減らし、現在は60匹未満が生息する。
2016年、オーストラリア政府の定める絶滅危惧種戦略行動計画の対象となり、保護が行われている。
出典:Using people power to save the world’s rarest marsupial
島の新しいすみかが、ギルバートネズミカンガルーの希望を高めさせる



ギルバートネズミカンガルーについては、別記事で詳しくまとめています↓

ゴートランドサイイグアナ(ジャマイカツチイグアナ)

1970年にヘルシャイア・ヒルズにて再発見。
出典:wikipedia内ページ

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絶滅したと思われた動物がわずかに生き残っていたとして、そもそも生息に適した環境が破壊されたから減った訳で、以前厳しい状況に変わりはない。
それでも生き残っていてくれると、たまらなく嬉しく感じてしまう。

出典:
Africa Extinct lion set for comeback
Examining the Extinction of the Barbary Lion and Its Implications for Felid Conservation
アトラスライオンを絶滅から救え、ラバト動物園の挑戦
幻の昆虫「ロードハウナナフシ」は生きていた ―― 再発見の物語
Dryococelus australis – Wikipedia


この記事を書いた人
せみやま せみやま
生き物が大好きなWebエンジニアです。
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Posted by せみやま