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南米のサル(新世界ザル)のアフリカ起源説を裏づける2つの化石 ペルーピテクスとタラピテクス

2020年10月25日

南米のサル(新世界ザル)のアフリカ起源説を裏づける2つの化石 ペルーピテクスとタラピテクス

現在、野生のサルが生息しているのは主にアジアとアフリカ、そして南米です。

南米に住んでいるサルは「新世界ザル」と呼ばれ、アジア・アフリカのサルに比べて鼻孔が外側を向いているため「広鼻猿類」とも呼ばれています(逆にアジア・アフリカのサルは「狭鼻猿類」と呼ばれます)。

熱帯雨林が多く残されている南米にサルがいるのは当たり前のように感じますが、実はそこには大きな謎と、隠されたドラマがありました。

300万年前まで、南米は孤立した島大陸だった

300万年前にパナマ地峡が形成され、北米大陸と繋がるまで、長い期間に渡って南米大陸は孤立した島大陸でした。
現在のオーストラリアのように、独自の大型哺乳類がのし歩く、独自の生態系を持った大陸だったのです。

しかし、南米で一番古いサルの化石は、3600万年前の地層から発見されています。

このサルはどこから来たのか? それは大きな謎でした。

幾つかの説があります。
・北米大陸から何らかの方法で来た
・他の大陸から分岐する前に南米にいたサルの祖先が進化した
・遠く離れたアフリカ大陸から来た

北米大陸から何らかの方法で来た、という説は一見有力そうに見えます。
しかし、北米では、南米より古いサルの化石は発見されていません。

他の大陸と分離する前に南米にいたサルの祖先が進化した、という説。
これもありそうですが、南米と、アジア・アフリカ大陸が分離したのは1億1000万年前。
霊長類の祖先と言われる動物が現れる遥かに前です。

南米のサルはアフリカから来た

現在、南米のサルについて最も有力とされている説が「遠く離れたアフリカ大陸から来た」というものです。

当時、アフリカ大陸と南米大陸の間に横たわる大西洋の幅は現在よりも狭く、2つの大陸の距離は500㎞程度しか離れていませんでした。
また、その間には、幾つもの島が点々と存在していました。

アフリカ大陸で発生した洪水によって大西洋に流出した流木や浮島に偶然乗っていた、かぎ爪を持った小さなサルが、遠く離れた南米大陸に流れ着き、独自の進化を遂げた。

それが、現在も南米で生きている新世界ザルなのです。

南米サルのアフリカ起源説を裏づける2つの化石 ペルーピテクスとタラピテクス

南米のサルのアフリカ起源説を強く裏づける、決定的な証拠があります。

1つは、ペルーの熱帯雨林で発見された小さなサルの歯の化石。
発見場所から「ペルーピテクス(Perupithecus ucayaliensis)」と命名されました。

この歯の化石が、北アフリカで同時代に生息していた「タラピテクス(Talahpithecus)」の歯の特徴と一致したのです。

広鼻猿類と狭鼻猿類の分岐はアフリカもしくはアジアで起こり、その内、広鼻猿類のサルの一部が、浮島に乗って南米に辿り着いた。
アフリカやアジアでその後、広鼻猿類は絶滅してしまったが、南米では生き残って拡散し、生態系内の一大勢力を築いた…。
そんなシナリオを描くことが出来ます。

浮島に乗って孤立した地域に移動して、生態系の中で大きなシェアを占めるというパターンは、アフリカ大陸からマダガスカルに上陸した原猿類と同じですね。


この記事を書いた人
せみやま せみやま
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Posted by せみやま