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ギルバートネズミカンガルー 絶滅から再発見、キノコが主食の有袋類!

2020年12月29日

ギルバートネズミカンガルー

西オーストラリアのボールド島を中心に数十頭が生息する有袋類、ギルバートネズミカンガルー。

一度は絶滅したとされ、長らく「絶滅動物」として扱われていた動物ですが、1990年代に再発見されました。

有袋類を中心に固有の動物が多数生息するオーストラリア。
「絶滅した」とされているタスマニアタイガーの目撃例なども絶えません。

ギルバートネズミカンガルーも生き延びていたんだから、ひょっとしたらタスマニアタイガーも生きているかも?
そう思わせる懐の深さが、オーストラリアの自然にはありますね。

ギルバートネズミカンガルーの歴史 発見から絶滅、再発見まで

ギルバートネズミカンガルー 絶滅から再発見、キノコが主食の有袋類!

ギルバートネズミカンガルーは1840年、イギリスの探検家ジョン・ギルバートによって発見されました。

ギルバートネズミカンガルーの記録は全てオーストラリア南西部の南海岸に限られており、元々広い生息域を持つ動物ではなかったようです。

1870年代にコレクターによって何匹かのギルバートネズミカンガルーが捕獲されましたが、これ以降の確かな記録が途絶え、1909年までに絶滅したとされました。

1970年代、2人の科学者トニー・スタートとデビッド・カーベイによって、オーストラリア南西部でギルバートネズミカンガルーの調査が行われました。
調査対象となった地域では、地元の人がクアッカワラビーを狩る際に、バンディクートくらいのサイズの動物をたびたび目撃しているという情報がありました。
地元の人が「ミニチュアカンガルー」と呼んでいたこの動物の特徴がギルバートネズミカンガルーと一致しており、2人の科学者の好奇心を刺激し、調査へと駆り立てたのでした。

発見者のギルバートによって、ギルバートネズミカンガルーは「クアッカワラビーのコンパニオン」とされていました。
これは、クアッカワラビーとギルバートネズミカンガルーの生息域が重なっていた事を意味します。
2人はその事を念頭に調査を進めます。

調査の結果、クアッカワラビーは多数発見出来ましたが、残念ながらこの時は、ギルバートネズミカンガルーの発見には至りませんでした。

しかし、その後の再発見のきっかけになったのは、実はクアッカワラビーでした。

1994年、西オーストラリアのツーピープルズベイ自然保護区で、クアッカワラビーの研究者であるエリザベス・シンクレアが研究のために設置していたトラップに、見慣れない動物が捕獲されました。

この小動物はクアッカワラビーの子どもに似ていましたが、最終的には別種の動物と判断され、調査のために研究所に送られました。
分析を進める内に、研究チームは、この動物が絶滅したはずのギルバートネズミカンガルーに似ている事に気づきはじめました。

より詳細な分析が進められ、最終的に、この動物が115年ぶりに公式に記録されたギルバートネズミカンガルーである事が確認されたのでした。

最大の生息地が山火事に…再絶滅の危機

ギルバートネズミカンガルー 絶滅から再発見、キノコが主食の有袋類!

再発見後の保護活動により、生息数を少しずつ増やしていたギルバートネズミカンガルーでしたが、その生存を脅かす大事件が起きます。

2015年の11月に発生した、ツーピープルズベイ自然保護区の大火災です。

この火災により、なんと保護区内のギルバートネズミカンガルーの生息地の90%が壊滅状態になってしまったのです。

幸い、保護活動の一環として進められていたボールド島への人工的な移住プロジェクトにより全滅は免れましたが、ギルバートネズミカンガルーの生息数は、野生個体と飼育個体、全てを合わせても60匹に満たないと考えられています。
この数字は、いつ絶滅してもおかしくない、本当に危機的なものです。

新天地を求めて 島への移住作戦

火災により、元々の生息地であるツーピープルズベイ自然保護区の集団は壊滅してしまいましたが、ボールド島に移住していたおかげで、ギリギリのところで絶滅を免れる事ができたギルバートネズミカンガルー。

しかし、同様の天災が、ボールド島で起こらないとも限りません。
さらにボールド島に住めるギルバートネズミカンガルーの数も限界に達しており、新しい生息地を早急に確保する必要がありました。

2016年、西オーストラリアのミカエルマス島に4匹のギルバートネズミカンガルーが離されました。
ミカエルマス島はギルバートネズミカンガルーを襲う天敵がおらず、新しい生息場所として期待が持たれてました。

ギルバートネズミカンガルーを保護する研究者のトニー・フレンド博士
ギルバートネズミカンガルーを保護する研究者のトニー・フレンド博士

しかし、結果的にこの試みは失敗してしまいます。
4匹中、2匹のギルバートネズミカンガルーが死んでしまい、残る2匹も弱った状態で保護されたのです。

これは、ギルバートネズミカンガルーが「極度の偏食」である事が原因だったと考えられています。
ギルバートネズミカンガルーは、哺乳類全体としても珍しい「キノコが主食」の動物で、なんと食事の90%がキノコを含む菌類なんです。
ミカエルマス島は90ヘクタールの小さな島で、さらに地形の2/3が石灰岩でキノコの生息に適しておらず、ギルバートネズミカンガルーが必要とするキノコをまかなう事が出来なかったようです。


ギルバートネズミカンガルーの生息に適した島の開拓は現在も進行中で、保護団体「ギルバートネズミカンガルー アクショングループ」による、西オーストラリアのミドルアイランドへの移住計画が進められています。
2017年と2018年に試験的な移住が行われ、現在までのところ、ギルバートネズミカンガルーの食料となるキノコ類も豊富で、新しい生息地として期待の目が注がれています。

ギルバートネズミカンガルー 絶滅から再発見、キノコが主食の有袋類!
ミドルアイランドにギルバートネズミカンガルーを放つ研究者、トニー・フレンド博士

せっかく絶滅を免れていたのに、災難続きのギルバートネズミカンガルー。
なんとか生き延びて欲しい! 本当にそう思います。

ギルバートネズミカンガルー 英語名は「ポトルー」?

ギルバートネズミカンガルーはネズミカンガルー属(Potorous属)に分類される有袋類です。

実は日本語で「ネズミカンガルー」としてまとめられているグループの生き物って、英語名ではどの種類にもネズミカンガルー(rat-kangaroo)という名前がついている訳ではなく、例えばギルバートネズミカンガルーは英語名で「Gilbert’s potoroo」(ギルバートのポトルー)という名前がついています。
「Gilbert’s rat-kangaroo」じゃないんですね。

その他のネズミカンガルーの中には「rat-kangaroo」(ラットカンガルー)という英語名がついている種類もいるんですが、ギルバートネズミカンガルーは属名がポトロス(Potorous)、種名ではポトルーと呼ばれています。

ポトルー。耳慣れない感じですが、ギルバートネズミカンガルーの小さくて可愛い雰囲気には、ぴったりだと思いませんか?



ニューギニアで90年ぶりに発見された「ウォンディウォイキノボリカンガルー」の記事はこちらです↓






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この記事を書いた人
せみやま せみやま
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Posted by せみやま