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キリン解剖記(郡司芽久)

キリン解剖記(郡司芽久)

キリンの研究者、郡司芽久さんによる科学読み物「キリン解剖記」を読みました。

TBSラジオの「伊集院光とらじおと」をよく聴いているんですが、番組にゲストとして出演していた郡司さんがキリンの解剖について生き生きと語るのを聞いて「これは本を買わねば!」と、即ネットで注文しました。

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子供の頃からキリン好き

1歳半の時、写真館での撮影の際に、数あるぬいぐるみの中から迷わずキリンを選んだという郡司さん。

生き物全般が好きだった郡司さんは東大農学部に入学。
在学中に研究テーマとして選んだのは、やはりキリンでした。

三つ子の魂百までと言いますが、自分が根源的に好きなものは、幼い頃から変わらないものなんですね。


キリン解剖記(郡司芽久)

本の表紙のオビに隠れた部分には、キリンに無邪気に手を伸ばす幼い郡司さんと、キリンを見つめる現在の郡司さんの姿が描かれています。


キリンが大好きな女の子が成長してキリンの研究者となり、さらにはキリンに関する大きな発見をする事になる。
そういう物語として読む事ができるのが、この本の大きな魅力だと思います。

キリンの解剖

これまでに30頭以上のキリンを解剖してきた郡司さん。

キリンの体の構造や、解剖する際の段取りなど、頭の中でわりと詳細にイメージできるほど、詳しく書いてあります。

読み進める中で、読み手と郡司さんの目線がどんどん近づいていき、キリンの仲間であるオカピの子供を解剖できるというチャンスが訪れた時は、こちらも嬉しくなってしまいました。

新しい発見のために行う解剖に心血を注ぎ、解剖する動物への敬意を忘れない郡司さんの姿勢に、共感しながら読む事ができました。

キリンの首の骨についての発見

人間も含めて、哺乳類の首の骨(頸椎)は7本で、これはキリンも同じです。

しかし、郡司さんは「存在しないはずの8個目の首の骨」を発見する事になります。

頸椎の下には胸椎がつながっており、胸椎には肋骨が接続しています。

それはヒトもキリンもオカピも同じなんですが、オカピとキリンの骨格を詳細に調べた郡司さんは、キリンの第一胸椎が、肋骨がついているにも関わらず柔軟に動く事を発見します。


キリンは頭を上げて高いところの葉っぱを食べたり、頭を下げて川の水を飲んだりする必要があります。
郡司さんは、キリンは第一胸椎を柔軟に動かせるよう進化した事で、首の上下運動に必要な柔軟さを得られたのではないかと考えたのでした。

肋骨がついているのは胸椎であり、首の骨ではない。
そんな固定観念にとらわれる事なく、柔軟な発想で研究を進め、実際にキリンやオカピを解剖してデータを積み重ねて実証に結び付ける。
当たり前のように理系の教科書に書かれているような事も「キリンの8番目の首の骨」のように、一つ一つに実証や発見に至るドラマがあるんだと、改めて気づかされましたね。

キリンのミッシングリンク、サモテリウム・メジャー

キリン科の動物は、現在はキリンとオカピしか生き残っていないのですが、かつては30種以上も存在していました。

キリン
首の長いキリン。


オカピ
首の短いオカピ。


オカピとキリンの中間くらいの首の長さのキリン類の化石が見つかっていない事が、進化上の大きな謎とされていたのですが、最近の研究で「サモテリウム・メジャー」という、オカピとキリンのちょうど中間くらいの首の長さを持つ動物がいたことが分かりました。


サモテリウム・メジャー
画像引用:Wikipedia
上からキリン、サモテリウム・メジャー、オカピ。


いなかったのではなく、化石が見つかっていないだけだと言われていた「進化中のキリン」ですが「やっと会えたね!」という感じです。

サモテリウム・メジャーについてもキリン解剖記で知る事ができました。

キリン解剖記 まとめ

科学読み物として、またキリン大好き少女が大発見をする物語としても読む事ができる「キリン解剖記」。

「解剖」という慣れない分野についての本でしたが、郡司さんの文章が読みやすく、すっと本の世界に入っていく事ができました。

生き物や動物園が好きでも、亡くなった動物がどこに運ばれて誰によってどんな風に解剖されているか、という事は普段、意識もしていない事だったので、とても興味深く読むことができました。

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この記事を書いた人
せみやま せみやま
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