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See How They Run(彼らの走りを見よ)

最近読んだ「マラソンと日本人」という本のプロローグで、ある小説のストーリーが紹介されていたのですが、走っている自分にとってグッとくる内容だったので、引用させていただきます。


【プロローグ】

推理作家のジョージ・ハーモン・コックスが「See How They Run(彼らの走りを見よ)」という短編を書いている。トラック種目の花形、1マイル走を専門とする大学生が初めて<ボストンマラソン>に出場する話だ。

<ボストンマラソン>を19回走った父親が病気で参加できなくなり、息子が代わりに20回目を走るための準備期間は2週間。トラック・ランナーである息子には42.195kmを走る意味が理解できない。父親が病床から語りかける。

「勝とうとするな。マラソンは35番まで新聞に名前が載る」

父と同じ名のジョニーは、スタート地点で出会った娘と話す。娘の父親も<ボストンマラソン>の常連だ。

「父はこの10年、一度も5位以内に入っていない」
「私の父も、最近は5番までに入ってないわ」
「勝てないと分かっているなら、26マイルと385ヤード(42.195km)はただの骨折り損だ」
広場では大勢のランナーがスタートを待っている。
「あなたにはコーチ、シューズ、食事もある。経費も。マラソンランナーたちにあるのは情熱と決意」

冷静に走り出したジョニーは、30km手前から胸がじわじわ痛み出した。心臓破りの丘までに暑さが増し、朦朧とした感覚に襲われた。マイル走の残り1周の感覚が何マイルも続き、父の仲間たちが水をかけてくれた。沿道の声援は途切れることがなく、誰かにレモンを手渡され、ジョニーは先頭に迫った。意識だけは妙にしっかりと下半身を動かしていた。

「声援が雨のように心を洗い、勇気を刻む。競技場の応援とは違う声が僕をここまで連れてきた」
沿道の人々は、ゼッケンを新聞に照らし合わせて名前を叫んでいた。父の名前……息子はもがくように先頭に躍り出た。ゴールに倒れ込んだとき、なぜ父が19年も走ったかを理解した。マラソンランナーは声援の中に己を確認する。止まるわけにはいかないのだ――。


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この記事を書いた人
せみやま せみやま
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