プルトニウムムーミン
「プルトニウムムーミン」と言うゲームをプレイした事があるでしょうか?
プレイした事があるのは、僕の弟、もしくは友人に限られると思います。
「プルトニウムムーミン」は、オリジナルのシューティングゲームが作れるスーファミのソフト「デザエモン」で僕が制作し、身内にだけ公開・プレイしてもらったゲームだからです。
目次
デザエモンとは?
1994年に株式会社アテナがスーファミで発売した、オリジナルの縦スクロールシューティングゲームを作れるソフトです。正式タイトルは「描いて・作って・遊べる デザエモン」。
自機(主人公)や敵キャラ・背景のグラフィックに加えてゲーム内で流れる音楽の作曲も可能でした。
オリジナルRPGが作れる「RPGツクール」の方が有名かもしれませんが、僕はこの「デザエモン」が好きで、適当なゲームを作っては完成させる前に途中で飽き、データを消してゼロから作り直すという、賽の河原で石を積むような事をしていました。
そんな僕が、デザエモンを使って唯一完成させる事が出来たゲームが「プルトニウムムーミン」でした。
「プルトニウムムーミン」制作のきっかけ
学生時代、友人とよもやま話をしながら下校していたところ、友人が突如「プルトニウムムーミン」という単語を口にしました。「奴の腹からプルトニウムが!」と言うセリフと共に「放射能を帯びたムーミン」というイメージが、友人に降りてきたのです。
彼に降りて来た天啓に、いたく創作意欲を刺激された僕は「このイメージを形にしてみたい」という想いから、制作を開始しました。
「プルトニウムムーミン」ゲーム内容
残念ながらオリジナルデータの入っていたデザエモンはすでに存在していません。元々、公開範囲が身内に限定されていましたが、今となっては完全に幻のゲームとなってしまいました。
20年以上前の事になるので、内容についての記憶もおぼろげにしか残っていませんでした。
ただ、最も身近で「プルトニウムムーミン」をプレイしてくれていた弟に、記憶が曖昧な箇所について補完してもらい、キャラクターの画像と台詞を「プルトニウムムーミン・リマスター版」として再現する事が出来ました!
ストーリー
ある朝、いつものように目が覚めたムーミンは、自分の体に起きた異変に気付く。身体が熱い!
ムーミンは体内にプルトニウムを宿し、膨大な熱と放射線を放つ存在になっていた。
時を同じくして、仲良く暮らしていたムーミン谷の仲間たちは突如として凶暴化。
全住民がムーミンの命を狙い、襲いかかってくる。
ムーミンの孤独な戦いが始まる―。
タイトル画面
この記事の冒頭に載せた画像は、当時のタイトル画面を可能な限り再現したものです。(下に再掲載しています)当時の環境と出来るだけ合わせるために、ドット絵制作ソフトの「edge」を使って描きました。
弟に見せたところ「当時とほぼ一緒」というお墨付きをもらう事が出来たので、かなり再現度は高いと思います。
このタイトル画面では、僕が当時作曲したオリジナルの曲が流れており(自分では全く覚えていませんでした)、尺八の音が印象的な曲だったそうです。
ムーミン(自機)
ムーミンの自機画像。
左移動時、ニュートラル状態、右移動時です。
背中のマークが禍々しいですね!
プルトニウムムーミン ゲーム開始直後の台詞
デザエモンには文字を表示する機能が無かったので、文字は一文字一文字ドット絵で描いて「当たり判定の無い敵キャラ」としてステージ内に配置していました。
今回も当時を思い出しながら、ドット絵のソフトで一文字一文字描きました。
ステージ構成
各ステージごとに、凶暴化したムーミン谷の仲間たちが、ムーミンを待ち受けています。1面「ムーミンパパ・ママ」
肉体的に完全な融合を遂げたムーミンパパ・ムーミンママが、ムーミンに襲いかかってくる。
2面「スニフ」
襲いかかるザコキャラを圧倒的な火力で一掃するものの、謎の怪しい花が群生したエリアに足を踏み入れたムーミンに、幻覚が牙を剥く―。
その先に待ち受けるのは、かつての友、スニフだった。
3面「ミー」
ミーの髪型は結構、自分でも気に入ってます。
ムーミン以外のセリフは基本、死ねと殺すだけですね。
4面「ニョロニョロ」
4面のボスはニョロニョロです。
ゲーム全編を通して、この時期、話題になっていた「新世紀エヴァンゲリオン」の影響を受けているんですが、このステージ以降、その傾向が顕著になります。
ステージ内に「ゴルゴダの丘」が登場し、ロンギヌスの槍で貫かれたリリスらしき生き物が登場します。
ニョロニョロは喋れないのでセリフはありませんでした。
5面「フローレン」
ボスはフローレン(スノークのお嬢さん)。
弟によると、ゲーム中で一番難易度が高いボスキャラは、このフローレンだったそうです。
友人たちもフローレンを攻略する事が出来なかったため、当時の僕はちょっとゲームバランスをいじって、倒しやすく調整したりしていたそうです。(接待?)
6面「スナフキン」
最終ステージでは、ムーミン谷の住人たちを凶暴化させた黒幕がスナフキンだった事が判明します。ラスボスは親友のスナフキン。
原作でも超然とした態度をとり、ムーミン谷に安住せずに旅を続けるスナフキンこそ、ラスボスにふさわしいと思ったのだと思います。
このスナフキン、戦闘開始時はATフィールドに守られており、それを破壊しない限り、本体にダメージを与える事は出来ませんでした。
問い詰めるムーミンに対するセリフも意味不明ですが、エヴァに影響を受けていた事もあって、カヲル君のような、ミステリアスなキャラにしたかったのだと思います。
重度の中二病という感じです。
スナフキンを倒すと、各ステージの画像とスタッフロール(デザエモン自体の制作スタッフ)が流れて、エンディングとなります。
エンディングには専用の文字を配置する事が出来なかったので、スナフキンを倒した時点で物語は終了となります。
あとがき
元データが残っていない「プルトニウムムーミン」を惜しく感じ、「もう一度プルトニウムムーミンが見たいなあ」と言う想いから、このローカルな作品を20年越しでリメイクする事が出来ました。
何の思想も無い、純度100%の悪ノリによる作品ですが、その方向性の中でやり切った気はします。
ご覧いただきありがとうございました。
都市伝説「ムーミンは核戦争後の世界を生きるミュータント」、原子爆弾との関係
あとがきに加えて、少しだけ余談を。友人に降りてきた「腹にプルトニウムを宿したムーミン」という発想は、彼の閃きによるものなのですが、ムーミンと放射能、核を結び付ける発想は、ムーミンにまつわる都市伝説や、原作の中にすら、存在しています。
偶然の一致なんでしょうか?
ムーミンについての都市伝説で「ムーミンは核戦争によって人間が滅んだ後の世界を描いた物語」「スナフキンは唯一の人間の生き残りで退役軍人」という、すごい設定が流布しています。
また、ムーミン谷に落下してくる巨大な彗星と、それによって発生するパニックを描いた作品「ムーミン谷の彗星」は、まさに日本に原子爆弾が投下された1945年に執筆されていました。
圧倒的な破壊力を持った存在に対して、抗おうとするムーミン達の姿が描かれる物語です。
都市伝説の方は何ともですが、世界に衝撃を与えた原子爆弾の投下が、執筆中の「ムーミン」に影響を与えた可能性は十分にあると思っています。
ただ、作者のトーベ・ヤンソンさんは、単に原子爆弾の象徴としてではなく、原子爆弾を含んだ「戦争」のイメージとして、彗星を出したのではないかな、という気がしています。
画像引用:ムーミン公式サイト, 引用ページ
プルトニウムムーミン メインテーマ
妻のバク子がプルトニウムムーミンにインスパイアされ、iOSのGarageBandで曲を作ってくれました!下のプレイヤーからどうぞ。